彼女はいつもうつむいて「結婚したい...」とつぶやく。
彼女は某食品会社に勤めている。
コンビ二に並ぶ商品などを企画する仕事だ。
とても良い仕事だと私は思う。
彼女は私の友人の中でもグンを抜いた結婚願望を持つ人。
「誰でもいい。誰でもいい。年収500万で十分。贅沢は言わない。毎日食べさせてくれればそれでいい。
早く仕事辞めたい。毎日ごろごろしたい。」
・・・・・。
主婦に対しては、憎しみに近い感情を持っている。
「楽して、ずるい!!」
・・・・・。
彼女の結婚願望には、キラキラしたものがない。
恋愛期間への憧れはない。
彼女には、以前から<結婚情報サービス会社>を勧めている。
彼女はもうその域に達している。
目的が明確なのだから、あとは徹すればいいのだ。悪いことではない。
しかし、
彼女は念仏を唱えるだけで、具体的に動こうとはしない。
そんな彼女が数ヶ月前からフィットネスクラブに通い始めた。
いい兆し!と私は嬉しく思った。
彼女は上半身にコンプレックスを持っている。小さくしたいらしい。
...なのに、ベンチプレスをしている...。
「見て、これぇ。」と二の腕にできたコブを見せてくれた。マヌケだ。
彼女に足りないもの...いや、欠落しているもの。
それは、“チャンスをつかむ準備”。
次に、“目的を見据えた行動”。
これが全くできていない。
加えて“同姓から好意を持たれること”。
これは今の彼女にはまだ高度過ぎて酷なリクエストだろうか?
まず、外見。
彼女はもともと顔立ちははっきりしているのだから、
きちんとメイクさえすれば映えるのである。
いつもアドバイスしているのだが、いっこうに変化はない。
面長を気にしているが、面長を強調したヘアスタイル。
インターネットはほとんどしないのに、私より高い利用料を支払っている。
TVはほとんど見ないのに、100チャンネルを持つケーブルTVと契約している。
何してるんだ。
つまり、“ぐうたら”なのだ。
「誰でもいい。」と言うわりには話を進めていくといろいろ条件が出てくる。
これが、20歳の小娘なら許されるかもしれないが、
まもなく34歳になる彼女。
「誰でもいい。」は謙虚ではない。
同姓として、同じ年齢の者として、恥ずかしい。
今のままでは、
異性はもちろん、同姓の友人にも紹介できない。
口を開けば「仕事を辞めたいから、結婚したい。主婦になりたい。」なのだから...。
彼女は今、「結婚」から最も遠いところにいる。
「結婚」には、つながってさえいないルートの上にいる。
そんな彼女と先日食事をした。
帰宅するとPCに彼女からのメールが届いていた。
「早く主婦になりたーい!」
しばらく面会拒絶。